新聞広告のこと


7月末から8月頭にかけて、一週間の間隔で、朝日新聞と日経新聞に、サンヤツ広告を出しました。
 
同じ本の広告でも、2社の広告版下制作の規定が違うため、宣伝文や配置を微妙に変える必要があります。
以下は、書籍用のサンヤツと呼ばれる枠の規定です。
 
日経は、こちらでデザインし、版下(印刷にまわす製版用の原稿)のデータを渡せばOK。(ただしもちろん審査はあります)
朝日は、社組と言って、原稿のテキストと、フォントやサイズを指定した用紙を提出し、あちらで組んでもらう。
 
日経にも、使えるフォントやサイズの大まかな既定がありますが、朝日のほうは厳格で、書体は2種のみ(明朝とゴシック)、サイズは7種のみ。
不便ではありますが、全体の紙面を見たときに、統一感があって品格を感じさせるのは確かに朝日のほう。これは個人の好みですが。
日経は、元気というか活気を感じさせますが、各出版社が書名を目立たせようとインパクトを競い合っていて、書名がみんな極太。どこまで太くなるんだ、という感じ。
 
朝日の広告の考え方、わたしは嫌いではないのですが、デザイン上いちばんの制約になって困るのが、ツメ打ち(字間を狭くする)ができないことです。
音楽の本も、道和書院のもう一つのジャンルであるスポーツも、書名にカタカナが入ることが多い。
カタカナは同じQ数(Pt)でも、漢字・平仮名よりも小ぶりになり、その分、字間が空いてしまって間延びするので、書名のインパクトが弱く、読みにくくなる。タイトルだけで大きなスペースを取ってしまうので、説明文など他の要素を少なくしなければいけない。それでいつも苦労しています。
 
今回は「100」という3桁の数字が加わったので、デザインのハードルがさらに上がりました。
文字単位で微妙にサイズを変え、字間を詰め、太さも変えて、ぱっと見の印象で、インパクトがあり、しかし操作が行き過ぎてバランスが悪く歪んだ感じにならないように。そして下品にもならないように。
デザインを専門にしている方なら、下の画像を見て、あれこれいじっていることがすぐわかり、うわ、キモチワルイ、と思うかもしれません。
 
直近で、同じ本の一本広告を出す機会もそうそうありません。
新聞広告にふさわしい内容とパワーを持った新刊であること、そして2紙の広告枠がちょうど適当な時期に空きがあること。
 
今回の『チェロの100年史』は、学術的かつ専門的な内容ですが、実用性も兼ね備えており、「いま弾いている曲を、かつてはどう弾いていたか」を多数の楽譜も示して詳述しています。
チェロに興味のある人は多く、プロ・アマ問わず探究心も旺盛、本をよく読む人が多い。
amazonでは、5月の発売からすぐに、このジャンルでのベストセラーが続いていました。
それで、2紙への広告を決めた次第です。
 
貴重な機会なので、デザインの裏話なども面白いかなぁと思って、画像とともにご紹介しました。
 
【1】日経
 
【2】朝日