「総額表示の義務化」をめぐって


版元(出版社)の有志が集まって、「総額表示を考える出版事業者の会」として、消費税法の改正を訴える提言をまとめました。
道和書院も提言書の起草メンバー25名の1人に加えていただき、改正に向けての運動に参加することにしました。


【総額表示の一律義務化に反対し、消費税法の改正を提言します】
https://note.com/sougaku_kangaeru/n/n3dfe25259778

 

総額表示とは税込の価格のことで、来年4月から、税込価格が記載されていない商品はすべて違法、ということになります。


しかし出版物の場合、すでにカバーに価格表示が刷り込まれていて(「定価=本体価格+税」といった形で)、これを修正するとなると、書店からすべての商品を回収、カバー等の刷り直し、古いカバーを取り外して新しいカバーに付け替える改装、再出荷、という、非常な手間暇と経費のかかる作業が必要になります。
特に小ロットの学術書・専門書や、刊行から数年経った既刊書の中には、その経費を回収できるだけの売上数が見込めず、「回収→断裁(廃棄処分)→絶版」とせざるを得ないものも出てきます。


「本体+税」の表示は、5%の消費税がスタートしたときに出版業界で協議を経て定着したもので、その後、8%、10%と税率が変化しても、このおかげで既刊書をそのまま流通させ販売することができました。
税率は今後も変化する可能性があり、もっとも合理的な価格表示法と考えます。

この問題は出版に限らないことなので、広く他業界にも呼びかけて、総額表示を義務とする消費税法の条文そのものの改正を訴えていきます。

すでに、著者・訳者の立場で出版に関わる方々、読者の方々がSNSで反対の意思表明をして下さっています。
当事者である出版社がそれに呼応して具体的なアクションを起こすべきでは、と思っていたところ、

・ころからhttp://korocolor.com/ の木瀬貴吉さん
・アルテスパブリッシングhttps://artespublishing.com/ の鈴木茂さん
・トランスビュー http://www.transview.co.jp/ の工藤秀之さん

が呼びかけ人となり、提言書のとりまとめをして下さいました。


その経緯が、木瀬さんの「版元日誌」にまとまっているので、シェア致します。(個人の署名を集める方法も、検討中です。)

https://www.hanmoto.com/nisshi-bangai-20201112?fbclid=IwAR0lZPwTmArSqrUCVkrTlsYdmfaEOgyp54O4cFO7WgCSWK6OZ5c30UVqyQ8


今のところ、
出版界からの訴えに対し、「本に挟み込んである売上スリップに税込価格が掲載されていれば、カバーは従来の表示のままで良い」という方向になってきています。

ただそれは、運用の範囲での例外的な措置であって、厳密に法に照らせば違法な状態が続くことになります。

それに、今後もし税率が変化した時に再び、スリップの回収・刷り直し・入れ替え、といった作業が必要になります。

この機に、法律そのものを、さまざまな業種・業態の実情に合わせて、柔軟なものに見直してほしい、という趣旨です。

ぜひ、提言書をご一読ください。