アトリエより 編集者のブログ

新年のご挨拶と、嬉しい書評記事

あけましておめでとうございます。

年明け早々、コロナウィルス感染者の急増を受けての再度の緊急事態宣言(とりあえず?関東の一都三県)。
まだまだパンデミックとの闘いは続く、と痛感させられた正月でした。

苦しい、つらい、悲しい思いを抱えて年を越した方々も、多いことでしょう。
こんな時こそスポーツや音楽が、気持ちを前向きにし、人と一緒にいる喜びを感じさせてくれる、はずが…… 
停滞を余儀なくされているのがもどかしい。
そしてスポーツ関係者や音楽家の苦境も、相当なものなのです。

2021年が、少しずつでも明るく前向きなほうへと、向かっていく年になりますように。



いささか旧聞のお知らせですが、昨年末12月27日付の山梨日日新聞に、小社刊行の『新版 スポーツの歴史と文化』が紹介されました。

読書欄の「図書館司書が薦める こんな時この一冊」というコラムで、筆者は山梨県立図書館の司書・山田あや氏。

年末年始のスポーツ観戦を念頭において、本書の内容をていねいに紹介し、「興味のあるスポーツの歴史と文化を知り、現代のスポーツに関わる平和、権利、産業などの問題とスポーツの価値について理解が深まれば」観戦もさらに楽しくなる、と結んで下さっています。

この本はもともと大学や専門学校のテキストとして作られた本。
とはいえ決して、可もなく不可もない無味乾燥なものではなく(いえ、テキストが皆そうだとは言いませんが)むしろ、執筆者たちの熱意があふれすぎて……というてんこもりの内容で、読む人によって興味を引かれるところが違い、いろいろな読み方のできる本だと思っています。




山梨県立図書館では、読書活動推進運動の一環として、この記事と連動する催しも定期的に行っておられるようです。

https://www.lib.pref.yamanashi.jp/sokushin/issatsu.html

そのような目利きの司書の方が、小社の本に目を留めてくださるとは嬉しいかぎり。
新年早々、勇気づけられました。
この場を借りて、評者の山田あやさんと、山梨日日新聞文化部のご担当者に、御礼を申し上げます。
ありがとうございました。

 

【山梨日日新聞ホームページ】
https://www.sannichi.co.jp/

【紹介された本】

新井博(編著)『新版 スポーツの歴史と文化』
https://www.douwashoin.com/%e6%96%b0%e7%89%88-%e3%82%b9%e3%83%9d%e3%83%bc%e3%83%84%e3%81%ae%e6%ad%b4%e5%8f%b2%e3%81%a8%e6%96%87%e5%8c%96/

 

 

 

「総額表示の義務化」をめぐって

版元(出版社)の有志が集まって、「総額表示を考える出版事業者の会」として、消費税法の改正を訴える提言をまとめました。
道和書院も提言書の起草メンバー25名の1人に加えていただき、改正に向けての運動に参加することにしました。


【総額表示の一律義務化に反対し、消費税法の改正を提言します】
https://note.com/sougaku_kangaeru/n/n3dfe25259778

 

総額表示とは税込の価格のことで、来年4月から、税込価格が記載されていない商品はすべて違法、ということになります。


しかし出版物の場合、すでにカバーに価格表示が刷り込まれていて(「定価=本体価格+税」といった形で)、これを修正するとなると、書店からすべての商品を回収、カバー等の刷り直し、古いカバーを取り外して新しいカバーに付け替える改装、再出荷、という、非常な手間暇と経費のかかる作業が必要になります。
特に小ロットの学術書・専門書や、刊行から数年経った既刊書の中には、その経費を回収できるだけの売上数が見込めず、「回収→断裁(廃棄処分)→絶版」とせざるを得ないものも出てきます。


「本体+税」の表示は、5%の消費税がスタートしたときに出版業界で協議を経て定着したもので、その後、8%、10%と税率が変化しても、このおかげで既刊書をそのまま流通させ販売することができました。
税率は今後も変化する可能性があり、もっとも合理的な価格表示法と考えます。

この問題は出版に限らないことなので、広く他業界にも呼びかけて、総額表示を義務とする消費税法の条文そのものの改正を訴えていきます。

すでに、著者・訳者の立場で出版に関わる方々、読者の方々がSNSで反対の意思表明をして下さっています。
当事者である出版社がそれに呼応して具体的なアクションを起こすべきでは、と思っていたところ、

・ころからhttp://korocolor.com/ の木瀬貴吉さん
・アルテスパブリッシングhttps://artespublishing.com/ の鈴木茂さん
・トランスビュー http://www.transview.co.jp/ の工藤秀之さん

が呼びかけ人となり、提言書のとりまとめをして下さいました。


その経緯が、木瀬さんの「版元日誌」にまとまっているので、シェア致します。(個人の署名を集める方法も、検討中です。)

https://www.hanmoto.com/nisshi-bangai-20201112?fbclid=IwAR0lZPwTmArSqrUCVkrTlsYdmfaEOgyp54O4cFO7WgCSWK6OZ5c30UVqyQ8


今のところ、
出版界からの訴えに対し、「本に挟み込んである売上スリップに税込価格が掲載されていれば、カバーは従来の表示のままで良い」という方向になってきています。

ただそれは、運用の範囲での例外的な措置であって、厳密に法に照らせば違法な状態が続くことになります。

それに、今後もし税率が変化した時に再び、スリップの回収・刷り直し・入れ替え、といった作業が必要になります。

この機に、法律そのものを、さまざまな業種・業態の実情に合わせて、柔軟なものに見直してほしい、という趣旨です。

ぜひ、提言書をご一読ください。

新聞広告のこと

7月末から8月頭にかけて、一週間の間隔で、朝日新聞と日経新聞に、サンヤツ広告を出しました。
 
同じ本の広告でも、2社の広告版下制作の規定が違うため、宣伝文や配置を微妙に変える必要があります。
以下は、書籍用のサンヤツと呼ばれる枠の規定です。
 
日経は、こちらでデザインし、版下(印刷にまわす製版用の原稿)のデータを渡せばOK。(ただしもちろん審査はあります)
朝日は、社組と言って、原稿のテキストと、フォントやサイズを指定した用紙を提出し、あちらで組んでもらう。
 
日経にも、使えるフォントやサイズの大まかな既定がありますが、朝日のほうは厳格で、書体は2種のみ(明朝とゴシック)、サイズは7種のみ。
不便ではありますが、全体の紙面を見たときに、統一感があって品格を感じさせるのは確かに朝日のほう。これは個人の好みですが。
日経は、元気というか活気を感じさせますが、各出版社が書名を目立たせようとインパクトを競い合っていて、書名がみんな極太。どこまで太くなるんだ、という感じ。
 
朝日の広告の考え方、わたしは嫌いではないのですが、デザイン上いちばんの制約になって困るのが、ツメ打ち(字間を狭くする)ができないことです。
音楽の本も、道和書院のもう一つのジャンルであるスポーツも、書名にカタカナが入ることが多い。
カタカナは同じQ数(Pt)でも、漢字・平仮名よりも小ぶりになり、その分、字間が空いてしまって間延びするので、書名のインパクトが弱く、読みにくくなる。タイトルだけで大きなスペースを取ってしまうので、説明文など他の要素を少なくしなければいけない。それでいつも苦労しています。
 
今回は「100」という3桁の数字が加わったので、デザインのハードルがさらに上がりました。
文字単位で微妙にサイズを変え、字間を詰め、太さも変えて、ぱっと見の印象で、インパクトがあり、しかし操作が行き過ぎてバランスが悪く歪んだ感じにならないように。そして下品にもならないように。
デザインを専門にしている方なら、下の画像を見て、あれこれいじっていることがすぐわかり、うわ、キモチワルイ、と思うかもしれません。
 
直近で、同じ本の一本広告を出す機会もそうそうありません。
新聞広告にふさわしい内容とパワーを持った新刊であること、そして2紙の広告枠がちょうど適当な時期に空きがあること。
 
今回の『チェロの100年史』は、学術的かつ専門的な内容ですが、実用性も兼ね備えており、「いま弾いている曲を、かつてはどう弾いていたか」を多数の楽譜も示して詳述しています。
チェロに興味のある人は多く、プロ・アマ問わず探究心も旺盛、本をよく読む人が多い。
amazonでは、5月の発売からすぐに、このジャンルでのベストセラーが続いていました。
それで、2紙への広告を決めた次第です。
 
貴重な機会なので、デザインの裏話なども面白いかなぁと思って、画像とともにご紹介しました。
 
【1】日経
 
【2】朝日

新しい年度のはじまり

道和書院、今日から3期目。
 
2018年12月に事業承継をして新会社にしてから、無事に3期目を迎えました。
小さな歩みですが、コロナ禍のもと、奇跡的に良いかたちで第2期を締めることができ、感慨ひとしおです。
これも、たくさんの方の応援のおかげです。
 
8月末決算、というのは珍しい、のかどうか、よくわかりませんが、そのように設定した理由はいくつかあります。
 
年末年始や3月の年度末に、わざわざ忙しくすることもあるまい。11月は印税などの支払調書作成もひと仕事。税理士さんに優しい決算期がいい、というのが一つ。
 
採用テキストを扱っている関係で、編集の仕事がいつも11月~2月が繁忙期になるので、それを外したい。正月くらい休みたい。
 
採用テキストを3~5月に出荷し、その売れ残りが返品されてくるのが7~8月。逆に、後期の採用の出荷が始まるのが8月。
採用に備えて重版したばかりの在庫が課税されてしまうリスクもない。商品の動き、在庫の量が、最も落ち着いている(会社の実態を適正に反映している)のがこの時期。
 
夏は急ぎの仕事も少なく、決算を見据えた、あれやこれやの差配もしやすい。
 
こういったことを考えるのも面白い。
編集以外の仕事もてんこ盛りでなかなか大変ですが、いちいち面白いので、苦にはなりません。
 
いまや、音楽書のジャンルは立派な出版社がたくさんあり、もう一つ出版社を付け加える必要はないと思いましたが……
 
前職でもそうだったのですが、「どこも取り上げない、しかし大きな可能性を秘めた企画」というのは必ずあるもので、むしろそういったものを手がけたい、と、思ってやってきました。
 
誰もが思いつく企画じゃ、面白くないじゃないですか。
そういう本を作るのが上手な出版社(編集者)は、他にたくさんありますし……
 
会社・組織そのものは決して大きくせず、小さく維持することで、無理な量産はしなくてもやっていけるシステムを作る。
そうすることで、企画と精神の自由を確保していきたいと思うのです。
 
傲ってるなぁ 
と感じる方もいるかもしれませんが、そんな偉そうなものではありません。
 
地を這う自由。
こういう発想は、もしかしたら女性ならではなのかも……
成功、成長、勝利、拡大、マジョリティ。そういうものを、はなから求めていないのです。
 
1冊、1冊、未来につながる本を。
どこまでいけるかわかりませんが、「明日、世界が終わるとしても、りんごの木を植える」ように、次につくる本に心を向けていけたら幸せです。

チェロの新刊と新聞広告

今朝の日経新聞朝刊、サンヤツと呼ばれる書籍用の枠に、広告を出稿しました。

ヴァレリー・ウォルデンさんの著作、翻訳は松田健さんで、『チェロの100年史』と題する本です。

図版や楽譜をたくさん示しながら、楽器そのものや、弓や楽器の構え方、ボウイング(弓使い)、楽譜に記された演奏記号などなど、さまざまな観点から、歴史的な変化を詳細に解説しており、A5判で414頁の大著です。

 

当代の名チェリスト、それも3名もの方々が、校正刷に目を通して細かくチェックを入れ、推薦文を寄せてくださいました。

鈴木秀美さん

懸田貴嗣さん

河野文昭さん

本当に、感謝のほかありません。訳者の松田健さんの情熱のたまものです。

 

とにかくお三方のチェックは厳しく、譜例の細かな誤りも見逃さない。

本書にも多数の名手たちが登場し、この楽器をこれでもかと磨きぬいてきた歴史が描かれていますが、その彼らの姿を彷彿させるようなやりとりでした。

チェリスト、恐るべし。

 

著者は、定評あるニューグローヴ音楽事典でチェロを中心に多数の項目を執筆しているヴァレリー・ウォルデンさん。

訳者の松田健さんは、音楽関係では、法政大出版局から『音楽テイストの大転換:ハイドンからブラームスまでの演奏会プログラム』という大著を訳出されています。

こういう本をちゃんと訳してくれる人がいるんだ! と以前から注目しておりました。

今回、お仕事をご一緒して、原稿の入稿から校正刷のやりとりまで、その完璧な仕事ぶりに感服しました。

著書・訳書を何冊か出されている方は、出版のしごとそのものが好きで、どうしたらその作業をより効率よく、より良い仕上がりにできるかを考えぬいて、一連の流れそのものが art になっている方がいます。

松田さんも間違いなくそのお一人。

いろいろあって出版が遅れてしまい、さまざまご負担もおかけしましたが、おかげさまで楽しい編集作業でした。

 

推薦の言葉を寄せてくださった鈴木秀美さんが、日経新聞の広告出稿のご報告をした折、こんな返信を送ってくださいました。

「音楽や楽器が歴史的にずっと変化していることを「教える」側がしっかり認識できるようになることを願っております。」

いつも、短い文章のなかに深く鋭いメッセージが込められていて、さすが、です。

 

コロナ禍で、音楽界そして出版界も沈み込んでいるような状況ですが……

この本が多くの方に読まれ、座右の書になっていくことを願っています。

緊急事態宣言、そして新刊発売

新型コロナウィルス感染症(COVID-19)への恐怖に世界中が覆い尽くされた2020年の春。
いま日本では、全国を対象に発出されていた緊急事態宣言が一部解除されて、すこし人の動きが出てきたところ。

 

この間の出来事をおおまかに書き留めておきます。

 

2019年12月31日、中国・武漢市当局が27人の「原因不明の肺炎患者」について言及、2020年1月9日に新型コロナウィウス検出との報道が出た。
日本では1月6日に国内初の感染者が確認され、1月29日、チャーター機で武漢市在住の日本人206人が帰国。
そして2月5日、横浜港に停泊中の大型クルーズ船で集団感染が発生していることがわかった。

 

このあたりから報道がコロナ一色になってきたと記憶している。けれど、政府の動きは鈍かった。
一つには、中国の習近平主席が4月上旬に国賓として来日することになっていたこと、もう一つが7月に東京オリンピックが予定されていたこと。

 

3月2日、突如として政府が全国の小中高校に臨時休校を要請。
3月5日、習近平主席来日が延期決定。
3月13日、アメリカのトランプ大統領が初めてオリンピック延期に言及し、IOCやWHOや世界の世論や日本政府の運動などあれこれの動きがあり、3月22日に東京オリンピック延期が正式決定。
そうしてようやく、コロナ対応が本格化した。

 

4月7日、政府は「新型インフルエンザ等緊急事態宣言(緊急事態宣言)」を発出(7都府県が対象。5月6日まで)。同月16日、宣言の対象を全国に拡大。
5月4日、宣言の期限を5月31日まで延長。
5月15日、39県を宣言から除外。

 

出版界では、3月初めの学校の休校を境に書店での売上が激減し、通常の営業活動ができなくなりました。
amazonから「日常生活を維持するための商品の配送を優先し、その他の商品の発注を抑制する」旨の通達が来て、PO(発注)が激減、プライム会員でも配送に数日かかる、カートが落ちるといった現象が頻発。
5月15日を境に再びPOが来るようになりましたが、いまだ復旧にはほど遠い印象です。

 

小社では4月刊行予定の本があったのですが……

音楽界はすでにコンサート活動が軒並み中止となって悲痛に沈み込み、3月の政府の休校要請で世の中が大混乱、この先なにが起こるかわからないという恐怖感・不安感が増大していき、とても新刊を告知する雰囲気ではなくなっていました。

そして、印刷・製本の制作も、流通も、すべてがこれまで通りにはいかないだろう、ということも否応もなく受け入れざるを得ませんでした。

 

判断に迷ったのは、ではいつまで発売を延期すれば状況が改善するのか、ということ。
最後は、状況は読めない、少しでも良くなっていることを期待して、できることをするほかない。
そう腹をくくるしかありませんでした。

 

世界史のうえでも未曾有の出来事に直面したこの春。
日々刻々、状況が変化し、何が起き、何を感じ考えるのか。
この体験は、のちのちまで自分の考えや行動に響いていくことと思います。

 

社会のすみずみまで、影響を受ける人がいない今回のコロナ禍。
多くのものを失い、悲嘆に沈む人たちが、一体どれだけいるのだろう。
そんななか、本を作り、その本をほしいと求めてくださるお客様になんとか届けることができる。
それは幸運以外のなにものでもなく……自分がやるべきことを精一杯やるのみです。

 

どうかこれ以上、苦しみ悩む人が増えませんように。

コロナ禍の日本で

ブログを始めることにしました。

 

本をつくる場なのに「アトリエ」は変かもしれませんが……
子ども時代、絵描きの父のアトリエの片隅で、本を読んだり絵を描いたり昼寝したりして育ち、それが今の自分の「根」になっています。
どんなに忙しくとも、季節ごとに変わる陽光、吹き抜ける風を感じながら、日々を過ごしたい。
そうして人間らしさを失わずにいることが、だれかの心の糧となる本、未来を少しでも佳い方向に変える力をもった本をつくることにつながるのでは。
そういう願いを込めて、「アトリエ」と名付けました。

 

この春、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)が世界を席巻し、経済活動や人々の暮らし、子どもの教育の場など、社会のすみずみまで打撃を与え、その影響ははかりしれません。
「戦争」の比喩も決して大げさではないのだと実感する日々。

 

2020年の年が明けたとき、東京オリンピックが延期になるとは、誰が予想したでしょうか。
そして、仕事のうえでも、自分や家族のいのちでさえも、「なんとか生き延びよう」という言葉が、本気で行き交うようになるとは。

 

一日も早く、事態が終息することを祈りつつ……

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