アトリエより 編集者のブログ

『同じ月を見あげて』

新刊
『同じ月を見あげて --ハーモニーで出会った人たち』
新澤克憲(著)


ゴールデンウィーク直前の発売となりましたが、多くの方々から反響を頂いています。


いちばん嬉しいのは、精神疾患を抱える当事者が、歓迎して下さっている様子であること。
著者の新澤克憲さんに対する、当事者の、そして周囲の協力者の方々の、深い信頼を感じます。


わたし自身のささやかな経験からですが、精神疾患を抱える人たちは、相手の嘘や、表面的な取り繕い、建前、言い訳、等々、「言葉とは裏腹の本心」に実に敏感です。

もともと繊細な感受性の人が多いのでしょうし、病気のせいで、「健常者」の想像を遥かに超える辛酸を舐めてきた… 言い尽くせない苦労を経験してきた、ためかもしれません。

彼らに対しては、いつも正直に、率直に、本心からの言葉と態度で向き合わないと、信頼を得られない。

新澤さんの文章を読んですぐに、これはすごい! とわたしが思ったのは、その率直さです。

率直で嘘の無い文章を書くのは、レトリックを駆使するよりも、実は難しいかもしれません。
小さな言葉一つ一つにゆきわたる繊細な配慮、相手の内面に対する洞察力、それを的確に表現する文章力…

精神疾患の当事者のことを書くわけですから、個人情報の扱いその他さまざまな配慮が必要で、時には「リアル」をぼかすフィクションも必要です。

しかし、フィクションがあっても、ここには確かに、「嘘が無い」。
不思議なことですが、当事者の家族として、これはまさに真実の物語、と思えたのでした。

新澤さんが長年にわたって「体当たり」で、いえ、体だけではなく「全人格で」当事者に向き合ってきた時間の積み重ねが、この本に凝縮されています。

この本を出させて頂けて良かった、と、しみじみ、じわじわ、思っております。


 

バレエを真の芸術に ーノヴェールの願い

昨日 4/29 は、ジャン・ジョルジュ・ノヴェールの誕生日でした。
 
1727年、パリ生まれ。
1810年、サン・ジェルマン・アン・レにて死去(83歳)。
18世紀中ごろに起こった「バレエ改革」に大きな役割を果たしたダンサー・振付家・舞踊理論家です。
アントワネット妃のもと、パリ・オペラ座のメートル・ド・バレエも務めました。


モーツァルト(1756-1791)を彷彿させる、旅から旅への激動の人生。
 
その多忙な日々のなか執筆された「舞踊とバレエについての手紙」は、1760年の初版刊行後またたくまに各国語に翻訳され、その後の舞踊の歴史を変えました。
 
ノヴェール自身も増補・改訂の筆を止めることなく、死の前年にも新しい版が出版されています。
 

舞踊をもっと美しく、もっと表現力の豊かな「芸術」に!
 
行間から立ちのぼるノヴェールの、執念とも言える情熱が、読む者の心を揺さぶります。
 
 
ノヴェール生誕を記念する「4月29日 国際ダンスデー International Dance Day」について:
https://www.international-dance-day.org/
 

新刊ができました

『同じ月を見あげて --ハーモニーで出会った人たち』

東京世田谷の就労継続支援の施設「ハーモニー」で心の病の人たちを支えてきた、新澤克憲さんの著作です。
ウェブ連載の記事を拝見し、ぜひ本にまとめたいとお願いして、実現しました。

30年に及ぶ活動のなかで出会ってきた、忘れられない人、今も一緒にハーモニーで時を過ごしている人…
精神障害の当事者と「共に過ごした時間」が、あたたかな眼で、生き生きと描かれています。

精神疾患の患者さんはコワイというイメージがありますが…
生真面目すぎて、繊細すぎて、優しすぎて。そういう人が多いように思います。
かれらの本当の暮らしや思いを知ってほしい。そのような願いを込めての出版となりました。

小社ではこれまで、「スポーツ・健康」と「音楽」を専門ジャンルとして、出版活動を続けてきました。
今回の本は、ジャンルを拡張する新しい一歩となります。

なぜ拡張? いろいろ理由はあげられるのですが…

それは、これから出す本で表現していけたらと思っています。

「障害」を扱っていく、ということではなく…

人間のウエルビーイング(心身ともに健やかな、よい在り方)とは?
病気になっても障害があっても、人として健やかでいることはできる

そのような根源的な問いを、さまざまな角度から思いめぐらす本を。
そう願っています。

2023年の出版市場

1月25日付で、「2023年出版市場(紙+電子)は1兆5963億円で前年比2.1%減、コロナ前の2019年比では3.4%増 ~ 出版科学研究所調べ」と題する記事が、HON.jp に掲載されました。
昨年の出版状況を俯瞰する興味深い記事です。

https://hon.jp/news/1.0/0/46198

小さな出版社で、特定の領域の学術書を扱っている小社のような出版社でも、出版界の大状況とちゃんとリンクしているのは、不思議なくらい。
そうだろうなぁと納得できるデータです。

・紙の書籍の市場は、相変わらず微減を続けているが、コロナ禍以前に復旧している。
・書籍の電子出版は、むしろ減っていて、全体の売上も下がっている。

コロナ禍で、「これからは電子だ」と雪崩のように電子化に向かう気運がありましたが……
過ぎてみると、「あれはいったい何だったの」?
以前は、「電子はないんですか?」と聞かれることもあったのですが、それもほとんど無くなりました。

紙か電子かについて、わたし自身は、本の購入は紙の本が9割。1割が電子といったところでしょうか。
電子書籍はテキスト主体の本だけで、一度読んで終わり、ページを繰って前を読み返したりする内容でもない、というとき。

電車の中では、電子はありがたい。
でっかい字で、隣の人に見られたらちょっと恥ずかしいな、と思いながら読んでいます。
コンタクトレンズや薄暗がりは、紙本に弱い。年齢がばれますね。

ただ、電子で買って、あとで紙を買い直す、ということも時々おこります。
結局不経済なので、買うときに一瞬、考える。どっちにするか。

話題の本、情報のチェックなら電子で十分ですが…… 
読みながら考えるのは、やはり圧倒的に紙がいいです。

2024年のはじめに

令和6年、新しい年の元旦に、能登半島の震災の報に接しました。

「新年おめでとうございます」とご挨拶するのが躊躇われるようなお正月でした。

被害の甚大さ、被災された方々の悲嘆の声に、言葉もありません。

被災地に一刻も早く必要な支援が届きますように。 
支援にあたっている方々の安全が守られますように。
心よりお祈り申し上げます。

*****

小社では昨年、下記の書籍を刊行することができました。

【スポーツ・健康科学】

『健康論 -大学生のためのヘルスプロモーション』電気通信大学健康・スポーツ科学部会(編)
『健康・スポーツ科学の基礎知識〈第4版〉』スポーツサイエンスフォーラム(編)
『体育の学とはなにか』林洋輔(著)
『キャンプセラピーの実践 -発達障碍児の自己形成支援』坂本昭裕(著)


【音楽】

『楽譜の校訂術 -音楽における本文批判:その歴史・方法・実践』J.グリーア(著)高久桂(訳)
『オルガンの芸術〈第2版〉』日本オルガニスト協会(監修)


購読者の方々、そして著者・訳者のご支援と励ましの賜と思い、心より御礼申し上げます。


今年も1冊1冊、大切に作ってまいりますので、どうぞよろしくお願い致します。

神保町ブックフェス2023

今週末、10月28日・29日の土日に、「本の街」東京・神保町でブックフェスティバルが開催されます。
https://osanpo-jimbo.com/info/5349873

小社は「参加出版社」ではないのですが…
もしお出かけになる方がいらっしゃいましたら、すずらん通りの共同書店 PASSAGE by All Reviews  に小社の棚がありますので、ぜひお立ち寄り下さい。

この数年に刊行したほとんどの書籍(スポーツも音楽も)を展示・販売しております。
道和書院の棚は、PASSAGE に入って左、奥のテーブルの少し手前です。


【すずらん通りの共同書店 PASSAGE by All Reviews】

■店頭の様子

■PASSAGE 内の道和書院の棚

■棚主紹介ページ
https://passage.allreviews.jp/store/BXI2A2D5R27QHRSBGIAUAR5M

 

【ブックフェスの概要】

本の街の本まつり
第31回 本の街 神保町ブックフェスティバル

日時 
2023年
10月28日(土)10:00~18:00
10月29日(日)10:00~18:00

会場
神田すずらん通り、さくら通り、神保町三井ビルディング公開空地

協賛
第63回 東京名物神田古本まつり 
10月27日(金)~11月3日(金・祝)

スポーツ分野の新刊2冊

秋は来るのか来ないのか。
待っているうちに9月が終わってしまったような…… 
今年もあっという間に10月。やれやれです。


8、9月に出た新刊2冊、いずれもスポーツ分野ですが、好評です。

『体育の学とはなにか』林洋輔(著)は、8月末に同志社大学(京都)で開催された日本体育・スポーツ・健康学会で初お披露目となりました。
わたしは現地入りできなかったのですが、販売所ではたいそう目立つ扱いをして頂き、これまでにない成果を収めることができました。
ご担当の紀伊國屋書店梅田本店の方々、そして他社の営業担当の方々のご厚意に、心から感謝です。

(学会販売所にて。初日の昼に、現地入りした他社の営業担当の方が送って下さって、感激しました)


『体育の学とはなにか』関連記事↓
https://www.douwashoin.com/blog/%e6%96%b0%e5%88%8a%e3%81%8c%e3%81%a7%e3%81%8d%e3%81%be%e3%81%97%e3%81%9f/



9月下旬刊行の『キャンプセラピーの実践――発達障碍児の自己形成支援』坂本昭裕(著)も、多くの書店から事前注文を頂きました。

油断して、ネット書店では早々にカート落ちの事態となって焦りましたが;;
幾度かの追加注文にも対応し、現在は「翌日配送」の通常モードになっています。

野外での「冒険プログラム」で、身体を動かし、知恵をしぼり、「仲間」と一緒になってサバイバルする。
その経験が子どもたちに及ぼす影響ははかりしれないと感じます。

後半の事例研究は読み応えがあり、風景構成法(LMT)に見られる子どもの変化は、素人目にも明らか。
今後の発展を願いつつ、広報・販売に精出しております。

『キャンプセラピーの実践』関連記事↓
https://www.douwashoin.com/blog/9%e6%9c%88%e3%81%ae%e6%96%b0%e5%88%8a/


(片桐 記)

 

パイプオルガンの国際コンクール

第9回 武蔵野市国際オルガンコンクールが開幕しました。

https://www.musashino.or.jp/iocm/1002196/

 

小社は特別協賛として、ささやかながらサポートをさせて頂いております。


ロビーではGAUDEAMUSさんがオルガン関連の楽譜や本を販売されます(9/9-10, 17-18)。
小社刊行の『オルガンの芸術〈第2版〉』と『オルガン奏法』も販売して頂くことになっていますので、聴きに行かれる方はぜひお手にとってご覧下さい。

『オルガンの芸術〈第2版〉』
https://douwashoin-books.shop/items/643e4ee473ce6e0029335219

『オルガン奏法』
https://douwashoin-books.shop/items/63646d09f3de5c413fc293cc


広告出校、協賛、法人会員等々、音楽分野でもスポーツ分野でも、各種のお誘いを頂きますが、小規模の会社ゆえ、お応えできないことも多々あります。
サポートできればという気持ちはあり、お断りするたびに苦しい思いをしていますが…
限られた資金はできるかぎり「次に出す良書」の制作費に充てたい。御寛恕を願う次第であります。


今回の協賛は、しかし、特別な思いがありました。
パイプオルガンの関連書2冊を刊行するにあたり大変お世話になったオルガニストの松居直美先生のご紹介、そして会場が武蔵野市民文化会館だからです。

選りすぐった企画と、気迫のこもったチラシ(!)で有名な武蔵野市民文化会館。
武蔵野市は小社の隣の市ですので、ほとんど「地元民」の気分。
かねてから尊敬の念をもっておりました。

古楽関連の公演を聴きに出かける機会も多いですし、パイプオルガンはなじみの響き。

盛会を心から祈りつつ、わたしもできるだけ伺うつもりでいます。
(片桐)

9月の新刊

9月25日発売の『キャンプセラピーの実践:発達障碍児の自己形成支援』の書誌情報を公開しました。

著者は、野外教育の専門家であり臨床心理士・公認心理師でもある、坂本昭裕氏(筑波大学教授)。

下記は、小社オンラインショップの販売ページです。
https://douwashoin-books.shop/items/64eda771fe1d6b002c3f3a78

 

発達になんらかの障碍があり、いわゆる「生きづらさ」を抱える子どもたち(とその親御さんたち)を支援する。
その一つの手段として、音楽もスポーツも、はかりしれない貢献ができると思っています。

いずれ関連書を出したいと願っていましたが、ご縁があってまずスポーツ分野で、坂本先生の長年の蓄積に基づいた知見を、書籍の形にすることができました。


キャンプ・ブームと言われる昨今。
「癒し効果」をうたった野外体験ツアーなども出てきているようですが……

効果をエビデンスとして示すのは難しい。
アメリカでも日本でも、支援に携わる人たちがその難しさを引き受けつつ、長い時間をかけて研究と実践を蓄積してきたそうで、本書ではその試行錯誤の歴史に触れることができます(第1部)。

第2部では、実際のキャンプセラピーの概要と冒険プログラムの内容、そして効果を数値として示す研究がまとめられています。

第3部は、ASD児、ADHD児の事例を経過にそって詳細に記録した質的研究。まるで自分もキャンプに参加しているかのような臨場感、説得力。

このキャンプセラピーでの体験は、決して一過性ではなく、その後の人生に少なからぬ影響を及ぼすのでは…… と共感しました。

自分の子ども時代を振り返ってみても、何かというと思い出される「あの時のあの人の、言葉・声・表情」がいくつかあり、それが陰に陽に人生の道筋を決めてきたように思います。

真剣にならざるを得ない、自然の中での冒険プログラムだからこそ、参加者同士で、カウンセラーとの間で、交わされる言葉や心の交流は、深く心身に刻印されるはずだと思いました。


本当に助けを必要としている子どもたちとその親御さんに、専門家の知見と技術に裏づけられたキャンプ・プログラムがあることを伝えたい。
これは書籍という媒体だからできることかもしれない、と感じつつ、編集作業を進めておりました。
(片桐)

新刊ができました

スポーツ(+体育+健康科学)の分野の新刊ができました。

体育哲学をご専門とする林洋輔氏(大阪教育大学)の456ページの大著『体育の学とはなにか』です。

内容の詳細は、下記の小社オンラインショップの販売ページをご覧ください。
https://douwashoin-books.shop/items/64c4649bf5e140007c7371ef

 

林氏は、すでに2014年に小社より『デカルト哲学と身体教育』を上梓されています。

わたしはその頃はまだ道和書院におりませんでしたから、当時の編集・出版の様子を知らないのですが、道和書院に移って以来、既刊書をできるかぎり読んできた中で、最初期に読んだ1冊が林氏の『デカルト哲学と…』でした。

あのデカルトが「体育」に関わっていたのか!という興味からですが、なにしろ未知のスポーツ分野、これ以上ないほど硬派の学術書。読み通せるかなぁと我ながら危ぶみつつ、しかし新鮮な内容に引き込まれて最後まで一気読みしてしまいました。

今回、思いがけず2冊目の企画のお話があったとき、何よりもその気宇壮大なテーマに驚き、それに真正面から取り組もうという著者の気概に、なんというか… ひとことで表現するなら、感動しました。

それならば。
出版社としてできることは、内容をできるだけ洗練させることはもちろん、その気概にふさわしい形を考えること。
美しく力強い、哲学書として造本しよう。
というわけで、当方も真正面から取り組みました。

体育の学問について、その始まりから現在まで、16の専門領域があるという幅広い研究のありようを、編集作業を通じて学ぶこともでき、感謝しております。


久しぶりの上製(ハードカバー)・角背。
思い切りのよい単色の装幀は、デザイナーの高木達樹さんの創意です。(片桐)




『デカルト哲学と身体教育』についてはこちらを:
https://douwashoin-books.shop/items/6369f854c15c5a70fa06343a

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