創業以来の足跡を振り返る


10月7日発行の出版業界紙『新文化』の「この人この仕事」に、筆者(片桐文子)が取り上げられました。先ほど掲載紙が届いたばかり。担当記者が心のこもった丁寧な対応をしてくださって、記事はもちろん嬉しいことですが、やりとりそのものが楽しく、励まされました。

この9月はそのために、道和書院を引き継いでから今日までを改めて振り返り、さらに遡って創業以来の刊行物と創業者(鬼海高允・美乃里夫妻)の足跡をたどる作業をしていました。

国立国会図書館、そしてJPRO(出版情報登録センター)で公開されているデータから、創業以来の道和書院の刊行物をまとめると、このようになります。

道和書院 刊行物一覧 196904-202109

創業者夫妻がすでに物故しており、わからないことが多々あります。刊行物もおそらく他にもあるのではないかと思われます。ただ、はっきりとわかったことは、スポーツ・体育の専門出版社として、スタートから非常に精力的に、最先端の研究成果を世に問う出版活動をしていたことです。

創業者の鬼海高允は私の従兄にあたりますが、50代半ばで急逝しました。著者たちと飲みに出かけることもしばしばだったと聞いています。出版の内容・ペースを見て改めて思ったのは、高允さん、生き急いだかなぁ、ということでした(亡くなったのは私が大学生のころです)。父がもっとも頼りにしていた甥、ということくらいしか知らなかった。しかし、同業の編集者として、真に尊敬に値する人だった、と改めて思いました。

そしてもう一つ、知らなかった!と申し訳なく思ったのは、高允急逝後の妻・美乃里の、目を瞠る仕事ぶりです。高允が亡くなった年こそ刊行点数が1点のみと落ち込みましたが、その後はペースを取り戻し、二十数年にわたって営々と専門書籍の刊行を続けていました。口数が少なく、いつも穏やかな微笑みを浮かべて、会えばいつも「体に気をつけて、頑張ってね!」と励ましてくれた優しい人。そういう印象だったのですが、編集者として出版人として、自分など及ばない強さをもった人だった、と知りました。

道和書院は1999年に日本体育学会より「永年にわたる体育学及び日本体育学会の発展への多大な貢献」に対して、感謝状を頂いています。創業者・高允の没後、5年たってのことです。これはおそらく、創業以来の出版活動、そして後を継いだ美乃里の努力を称え励ますものだったのではないか、と推察しています。

そこにはもちろん、著者の方々のお力添え、取引先のご厚意(とくに創業以来今日までお世話になっている大盛印刷さん)、業務委託で編集などの実務を担って下さった方々の支え、そして高允・美乃里の子供たちの努力がありました。それがなければ、今日まで道和の歴史が続くことはなかったでしょう。

この9月で、新生・道和書院は第4期目に入りました。
創業者、そしてこれまで道和書院に関わってくださったすべての方々の思いを継いで、これからも1冊1冊、価値ありと信じる本を、世に出していければと思っています。

 

(小金井市 武蔵野公園)