オビを付け替える


室靖治(著)『「記録の神様」山内以九士と野球の青春』。

プロ野球のはじまりのころ、野球の規則(ルール)と記録(スコア)の整備に力を尽くした山内以九士(やまのうち・いくじ 1902-1972)の評伝です。
「日本に野球が伝わって150年」の節目となった、2022年6月に刊行した本です。

このたびオビを一新し、新たな装いで皆さまにご紹介することにしました。

受賞とか、ドラマ化とか、いろいろなケースでオビの付け替えはしてきましたが、道和書院では初めてです。

記録の世界で「神様」と呼ばれる人は実は複数いて、野球ファンに最もよく知られているのは宇佐美徹也氏かもしれません。
山内は、プロ野球が2リーグに分裂したあと、パ・リーグの第2代記録部長となりましたが(1951年)、その後に「弟子入り志願」で記録部に入ってきたのが宇佐美氏です。

のちに報知新聞の記者となった宇佐美氏の健筆によって、野球記録の面白さがファンにも伝わりました。

一方の山内は、功績は大きいにもかかわらず、本人が生前は殿堂入りを固辞したという人柄・いきさつのゆえか、一般への知名度は今ひとつ(山内は1985年に野球殿堂入り)。

そのため2022年の刊行の際には、「ナイツ」のお2人に応援のメッセージをお願いし、写真もお借りして、華やかなオビを付けて発売しました。
おかげさまで多くの書店にご注目いただき、目立つ店頭展開となったのは、本当に嬉しいことでした(ありがとうございました!)



今回の新しいオビでは、山内が作った『レコナー(打率早見表)』を前面に出しました。

活版印刷、362頁。
約70万の数字が淡々と並ぶ「レコナー」。
1文字1文字、活字(鉛)を組んで作られたこの版面から、野球に賭けた山内の熱い思いが伝わってくる気がします。

 


付け替えはオビだけで、カバーは変わりません。

装幀を担当して下さったデザイナーさんとしては、オビと連動してカバーも新しくしたい、のは重々承知なのですが…
申し訳ない。諸般の事情で、変更はオビだけ!としました。



私自身、この本で初めて山内以九士氏の詳しいことを知りました。
そして特に、
・レコナーの制作/自費出版。
・定年後にたった1人で、1リーグ時代のスコア5,000試合分を精査し、その後の記録集計の基盤を作ったこと。
という2点に、限りなく、深々と、感動しました。

歴史を見る眼、そのうえで自分のミッション(使命)は何かを正確に捉え、実行すること。

遠い未来に評価されることは、本人はわかっていた。
一方で、現在の評価はなかなか得られないだろうこともわかっていた。
それでもやり遂げた。

そういう人たちが数多いて、歴史は作られてきたんだな、と。

多くの方に読んで頂きたい本です。どうぞ、ぜひ。