ヴェルクマイスター「音楽の逆説的談話」(1707年)

全訳と解説
■編著者 村上 曜
■著者 アンドレアス・ヴェルクマイスター
■訳者 村上 曜
■発行年月日 2025年10月24日 刊行予定
■体裁・総頁 A5判並製・232頁
■ISBNとCコード 978-4-8105-3014-8
■価格(税別) ¥3,200

■内容紹介

調律法で知られるヴェルクマイスター(Andreas Werckmeister, 1645-1706)の最後の著作(Musicalische Paradoxal-Discourse. Quedlinburg, 1707)。

ルター派神学、ピュタゴラス主義、数比によるハルモニア論、数象徴……
バッハをはじめ、バロック期ドイツ中北部ルター派地域の音楽家たちが共有していた音楽観・世界観をかいま見せる、貴重な文献。

訳者による解説は、ヴェルクマイスターの生涯と、その思想・音楽理論の要点がまとめられている。
詳細な訳注も、当時の音楽家に影響を与えていた哲学者・音楽理論家とその著作の情報など、読み応え十分。

■目次

はじめに(村上曜)
参考図版

訳者による解説
(1)ヴェルクマイスターの人物と業績
(2)ヴェルクマイスターの思想
(3)本書の概要
(4)訳文について
(5)音律計算の基礎
(6)ドイツ式タブラチュア譜についてはじめに(村上 曜)

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ヴェルクマイスター『音楽の逆説的談話』(1707年)全訳

表紙図版と対訳
献辞
相続人一同による挨拶文
尊敬すべき読者諸氏へ
序文
各章の索引と内容

序章
第1章 音楽的数比の分割について本作へのひとつの準備。
第2章 天国への道のりは調和的であることの数学と聖書による証明。
第3章 いかに人間の肉体と魂は調和的に創造されたか。ならびに星辰の作用について。
第4章 なぜ人間は音楽を喜ぶのか。また、また、作曲家や音楽家はどこから生まれたのか。
第5章 神の似姿たる人間は音楽を通じて創造主を讃美すべきであること、聖書にでてくる建物や時代もまた霊的音楽の調和的奇蹟であることについて。
第6章 権威者たちが止めさせられるであろう音楽の濫用について。
第7章 人々がいかなる性向を持ち、音楽を好んでいるか。また、異教徒たちは音楽に関していかに遠いところにいるか。
第8章 初期キリスト教徒たちの音楽とその変化について。
第9章 ソルミゼーションと線譜から生じる大変な難点。
第10章 線譜にはそれ自体に大きな難点があることの証明。
第11章 いかにすべてが十二音だけで演奏あるいは歌唱し得るかという証明。
第12章 五線譜は十二音名以上に多数の変位を持つことのさらなる証明。
第13章 音律はどのように吟味され得るのか。そして、ドイツ式タブラチュア譜について。
第14章 クロマティックな五線譜は調律した鍵盤にいかに適用されるか。
第15章 コラール唱の無秩序について。
第16章 古いオルガンの単純さ。
第17章 旋法はどのように区別されるか。
第18章 調和数の本性と属性について。
第19章 数のもつ隠された意味について。
第20章 調和数がそれ自体で分割された場合の属性について。
第21章 調和数の分割について。
第22章 音楽に不協和をもたらす数の性質について。
第23章 調和基礎数はいかにうまく調律された音律へ変容させられるのか。また、それらの隠された意味について。
第24章 不適切な音律と誤ったキリスト教の比較。
第25章 音律はいかに完全あるいは不完全であるか。音律はいかにキリスト教と比較され得るか。
第26章 音楽的数比を使った主の祈り。そして結語。

………………

付録 シュターデンの円環図/テトラクテュス/教会旋法
参考文献
人名索引

■著者・訳者紹介

【著】

アンドレアス・ヴェルクマイスター(Andreas Werckmeister, 1645-1706)

オルガン奏者・作曲家・音楽理論家。鍵盤楽器の古典調律法の考案者として知られる(特に「ヴェルクマイスター III」)。現在のドイツ ザクセン=アンハルト州に生まれ、生涯その地域から出ることなく、キリスト教の敬虔な信仰に基づく音楽理論を発信し続けた。J.S.バッハ、J.G.ヴァルター、ブットシュテット、マッテゾンらがヴェルクマイスターの調律法や作曲技法に関する著作に触れている。

【編著・訳】

村上曜(Yoh Murakami)

東京都出身。都立西高等学校卒,京都大学工学部物理工学科卒,京都大学大学院工学研究科修士課程修了,グラスゴー大学Ph. D. 課程修了。Ph. D.(航空宇宙工学)。放送大学修士課程修了(美学)。英国王立音楽検定(ABRSM)ディプロマ取得(チェロ演奏)。翻訳家,チェリスト,著述家。著書『力学』『熱力学』『振動と波動』『電磁気学』(プレアデス出版),『弦楽器の音程』『チェロのヴィブラート』『ミーメーシス理論に基づく演奏のための音楽美学』(Kindleダイレクト・パブリッシング)他。訳書『マッテゾン「新しく開かれたオーケストラ」(1713年)全訳と解説』(道和書院),『チェロの原理あるいは応用』(Kindleダイレクト・パブリッシング)他。「すべての文化は精神史である」との立場から,西洋音楽の本来の在り方であった〈思想としての音楽〉の伝統に立ち返るべく,哲学的な演奏理念の実践と美学的な演奏,音楽理論の歴史的・思想的背景を探求している。

(このデータは本書刊行時のものです)