マッテゾン「新しく開かれたオーケストラ」
(1713年)
全訳と解説
■内容紹介
鬼才・マッテゾンによる”音楽入門”
『完全なる宮廷楽長』など数十冊にのぼる著作を残したマッテゾンの最初期の本。
隆盛を誇ったハンブルクで、増え続ける聴衆・アマチュア音楽家のための手引きとして書かれた。
楽譜の読み方、曲種、様々な楽器、イタリア・フランス・ドイツの音楽の違い、調性格論など。
実践的だが音楽の核心を踏まえた記述は生き生きとして、明快な翻訳は読む者を飽きさせない。
読者対象は職業音楽家ではなく、教養ある上流市民〈ギャラントム氏〉だったが、当時の音楽家たちの思考、演奏習慣に対する痛烈な批判も展開され、刊行直後から音楽界で大きな波乱を巻き起こした。
18世紀前半の音楽界を知る必読書。
【訳者による「解説」より】
「本書刊行後の西欧ではギャラント趣味の音楽が旺盛となり,感性主義の時代となり,上流市民が文化の担い手として台頭したことは音楽史が示す通りである。その意味で本書は,パラダイムが大きく転換する時代の狭間にあって,新しい時代の幕開けを告げる号砲でもあった。」
■目次
はじめに(村上 曜)・参考図版………………
マッテゾン『新しく開かれたオーケストラ』(1713年)全訳
序章 音楽の頽廃とその原因について
第1 部 呼称法
第1 章 数比による諸音程
第2 章 記号全般について
第3 章 特に拍子について
第4 章 音符、休符、その他の記号について
第2 部 作曲法
第1 章 協和音程・不協和音程の一般則について
第2 章 協和音程の特別則について
第3 章 不協和音程の特別則について
第4 章 音楽の様々な様式および種類について
第3 部 判断法
第1 章 現代のイタリア、フランス、イギリス、ドイツの音楽の違いについて
第2 章 音楽の調について
第3 章 楽器について
補遺
問いの解答 音楽と絵画のどちらがより尊敬されるべきか
短い論評(ラインハルト・カイザー)
…………
解説(村上 曜)
1.マッテゾンの生涯
2.『新しく開かれたオーケストラ』の概要と歴史的位置づけ
3.日本語訳について
人名索引
■著者・訳者紹介
【著者】ヨハン・マッテゾン(Johann Mattheson, 1681-1764)
ハンブルクで活動した作曲家・オペラ歌手・音楽理論家・編集者・外交官・オルガニスト。尋常ならざるエネルギッシュかつ博覧強記な著述家であり、主要な大著だけで15冊を数え、同時代の音楽に関する話題を余すところなく論じ尽くした。また無慈悲な論客としても知られ、多くの論敵が公開誌上論争に斃れていった。流行の軽易洒脱な作風を支持して重厚長大な様式に反対し、感性主義の立場から伝統的な数比論を非難した。18世紀の音楽思想・ドイツ楽壇の様子を知る上で、本書をはじめ『完全なる宮廷楽長』などのマッテゾンの著作群は必読必携である。
【編著・訳】
村上曜(Yoh Murakami)
東京都出身。京都大学工学部物理工学科卒、京都大学大学院工学研究科修士課程修了、グラスゴー大学Ph.D.課程修了。Ph.D.(航空宇宙工学)。放送大学修士課程修了(美学)。英国王立音楽検定ディプロマ取得(チェロ演奏)。翻訳家、チェリスト、信州大学助教。日本音楽学会会員。
著書:『力学』『熱力学』『振動と波動』『電磁気学』(以上プレアデス出版)
訳書:『チェロのための完全な指導書』『チェロ教程』『チェロ演奏のための音楽的、理論的、実践的教本』『チェロの原理あるいは応用』他(以上amazon Kindle ダイレクト・パブリッシング)