ハイニへン
「新しい通奏低音奏法」
(1711年)
全訳と解説
■編著者 | 久保田慶一 |
---|---|
■著者 | ヨハン・ダーヴィト・ハイニヘン |
■訳者 | 久保田慶一 / 小沢優子 |
■発行年月日 | 2022年1月14日 |
■体裁・総頁 | A5版並製・324頁 |
■ISBNとCコード | 978-4-8105-3006-3 C3073 |
■価格(税別) | ¥4,000 |
■内容紹介
音楽史の基礎文献!
J.S.バッハと同時代のハイニヘンの実践的教本、待望の完訳
ヨハン・ダーヴィト・ハイニヘンは1683年生まれ。
J.S.バッハの2歳年上で,バッハがケーテンの宮廷楽長に就任した同じ年に,ザクセン選帝侯下のドレスデンの宮廷楽長となった人物である。
J.G.ヴァルターは『音楽事典』でバッハよりも多くの紙幅を割いてハイニヘンを紹介し,音楽史家C.バーニーは「ドイツのラモー」とハイニヘンを称えている。
ライプツィヒの聖トーマス学校でヨハン・クーナウらに教えを受け,ライプツィヒ大学法学部に進学後も,テレマン創立のコレギウム・ムジクムや,ライプツィヒの新しいオペラ劇場で,チェンバロ奏者として活躍。
大学卒業後は弁護士として働いていたが,1709年,ザクセン・ツァイツのナウムブルクの宮廷楽長となったのを機に,音楽の道へ。
オペラ,宗教曲,世俗カンタータ,協奏曲など,旺盛な作曲を展開し,イタリアでも数年にわたりオペラ上演などの活動をおこなった。
弱冠28歳で,本書『新しい通奏低音奏法』をハンブルクで出版。
書名に「愛好家が独学でも通奏低音を習得できるように」とうたい,多数の譜例を掲載して,徹底的に実践的にまとめられた教本である。
この時代の即興や作曲に関する考え方,劇場様式(レチタティーヴォ)の奏法,修辞学と関連したインヴェンツィオ(主題)の創作,アフェクト(情念)の表現についても説明されており,バロック音楽を理解するための最高の概説書ともなっている。
本訳書の特徴はもう一つ。
ハイニヘンは46歳で若くして亡くなったが,その直前,900頁を超える大著『作曲における通奏低音』(1728年)を出版している。
その内容は前著の増補改訂版と言えるため,本書では「解説」で,2冊の間でどのような相違があるのか,ハイニヘンの音楽観の変化など,そのエッセンスを詳しく紹介。
この1冊で,ハイニヘンの著書2冊についての概要をつかめるようになっている。
50頁を超える「解説」はほかに,ハイニヘンの人物像と作品の概要,同時代の評価,音楽論の特徴などを詳述している。
「付録」には,ハイニヘンが2冊の著書で紹介したチェザリーニとアレッサンドロ・スカルラッティのカンタータ全曲を,ハイニヘンの指示に基づいて現代のチェンバロ奏者がリアリゼーションした例を掲載。ハイニヘンの教えを音楽で実地に確認できる。
【チラシ・表】
【チラシ・裏】
■目次
はじめに(久保田慶一)参考図版/ハイニヘン関連地図
ハイニヘン『新しい通奏低音奏法(1711年)』全訳
序文
第1部 通奏低音の基本原理
第1章 三和音の配置と進行
第2章 数字と各種和音
第3章 短い音符の扱い方
第4章 すべての調における三和音、数字、短い音符の扱い方
第5章 初心者のための通奏低音の装飾法
第2部 通奏低音の完全な学識
第6章 数字なし低音、特に劇場音楽での実践
第7章 レチタティーヴォ様式の伴奏
第8章 実際のカンタータ楽曲における規則の活用
第9章 「音楽環」
第10章 通奏低音の効果的な練習法
付録:リアリゼーションの例/歌詞対訳/ハインヘンによる注釈
チェザリーニ《私のいとしい美しいクローリ》
A.スカルラッティ《さあ行って,私をもっと苦しめておくれ》
解説(久保田慶一)
1. ハイニヘンの生涯
2. 同時代の評価
3. 1711年版と1728年の題名について
4. 1711年版と1728年版の形式的な比較
5. 通奏低音で使用される音程と和音
6. 不協和音の扱い方について
7. パルティメントとオクターヴ規則
8.「一般規則」と「特別規則」
9. ハイニヘンのオクターヴ規則
10. 通奏低音と作曲
11.「音楽環」
12. 劇場様式における通奏低音
■著者・訳者紹介
【著者】ヨハン・ダーヴィト・ハイニヘン(1683-1729)
J.S.バッハと同時代に,ザクセン選帝侯下のドレスデンの宮廷楽長をつとめた人物。ヴァルターは『音楽辞典』でバッハよりも多くの紙幅をさいてハイニヘンを紹介し,音楽史家C.バーニーは「ドイツのラモー」とハイニヘンを称えている。
弱冠28歳で『新しい通奏低音奏法(1711年)』を執筆。46歳で早世する直前、900頁を超える大著『作曲における通奏低音(1728年)』を出版する。これは1711年の著作の増補改訂版と言えるため、本訳書の「解説」では、2冊の相違点や音楽観の変化も詳しく紹介している。
【編著・訳】
久保田慶一(Keiichi Kubota)
東京藝術大学大学院修士課程を修了。ドイツ学術交流会の奨学生としてフライブルク大学,ハンブルク大学,ベルリン自由大学に短期留学。東京学芸大学教授,国立音楽大学教授・副学長を経て,現在,東京経済大学客員教授。
著書=『バッハ』(作曲家◎人と作品シリーズ),『バッハの四兄弟』,『エマヌエル・バッハ』,『モーツァルト家のキャリア教育』など。訳書=L.モーツァルト『ヴァイオリン奏法』,K.パウルスマイアー『記譜法の歴史』。
【訳】
小沢優子(Yuko Ozawa)
東京藝術大学大学院音楽研究科修士課程修了。現在,愛知県立芸術大学,南山大学,三重大学,椙山女学園大学各非常勤講師。共訳書=R.アンガーミュラー『モーツァルト殺人法廷』。