ハイニヘン「新しい通奏低音奏法」、今日から販売開始です


あけましておめでとうございます。
長びくコロナ禍、またまた新顔(オミクロン)が悪さを始めて心配ではありますが…
一つずつできることを積み重ねて、明るい方へ、明るい方へと進みたいと思います。

ハイニヘン著「新しい通奏低音奏法」(1711年刊)の「全訳と解説」、本日より、小社のオンラインショップで販売を開始します。
通奏低音を独学でも習得できる、徹底して実践的な教本であると同時に、18世紀初頭の音楽家たちが何を考え、どのように創作・演奏に取り組んでいたかをうかがうことのできる、貴重な史料です。

通奏低音の装飾音はどのように付けるのか、数字が付されていない低音から和音進行をどう組み立てるのか。
教会での音楽のみならず、劇場での演奏、とくにレチタティーヴォの伴奏をどのように行うのかといった、現場の音楽家たちが知りたいと思う具体的な課題に、多くのページが割かれています。


私が非常に興味深く読んだのは、巻頭の「序文」におかれた「インヴェンツィオの創出」でした。
インヴェンツィオとは久保田慶一先生の注釈で「弁論」の「修辞的な図式」における、語りだしの「着想」にあたるもの。まずはそれをどう創出するかが、巻頭から楽譜例をあげて詳細に語られています。

かのヨハン・セバスティアン・バッハが「2声のインヴェンション」を作曲したのは1720年代の初め。
当時の音楽家たちの最先端の話題であった「インヴェンツィオの創出」をめぐる、バッハなりの一つの「解」ではなかったか。
さまざまな想像をかきたてられます。
歴史的な史料に接する面白さはこういうところにあります。

今回の「全訳と解説」は、本当はもっと大判の(B5かA4か)サイズにして、譜面台に置いて実際に弾きながら読み進めるようにしたかったのですが、製作のコストや出版後の管理の面を考慮し、やむなくA5としました。
「使いにくい」本で申し訳ないのですが…


せめてもの工夫で、開きのよいPUR製本を採用しています。表紙(カバーを取り除いた後の青い紙)が少々硬めの用紙なので、最初にすこし力を入れて、本を柔らかくほぐすように真ん中から開いてください。そうするとページが開いたまま戻らなくなって、読みやすくなります。

(片桐文子)